永遠なる魂 第一章 命の水 4

4 気がつくと浅井はベッドに寝かされ、エリカが目に涙をいっぱいに溜め見つめていた。 「良かった。気がついたのね」 「ああ」 気力はまったく失せていて、浅井は小声で答えることしかできない。 「柿本さんから聞いたわ。でも、気を落とさないで」 エリカ…

永遠なる魂 第一章 命の水 3

3 浅井はある患者のことがずっと気掛かりで、研究所の運営が楽になっても心楽しまなかった。 その患者の父親と初めて会ったのは一年半ほど前だった。野村という六十歳近い老紳士で、浅井がある新聞に「ゲルマニウムにとりつかれて二十余年」と題して寄稿し…

永遠なる魂 第一章 命の水 2

2 翌日の月曜日。午前十時に東京都調布市の浅井ゲルマニウム研究所へ出勤した浅井に、待っていたように小柄で小太りの及川浩と、ほっそりした柿本紀博が走り寄ってきた。及川は山登りと蝶々の収集が趣味で、外歩きばかりしているので肌は焼けて浅黒く、普段…

永遠なる魂 波乱の人生を有機ゲルマニウムに懸けた男の物語

この作品は2002年10月にバンガード社から刊行した。だが、社長の木場康治氏が急逝、同社は解散となり、作品は絶版となった。 その後、アマゾンなどで古書が、4500円~1万6500円という、途方もないプレミアム付き金額で販売されてきた。 あまりにも行…

 番外編 維新への息吹 昭和48年の拙い論文

これまで書いてきた「日本論」の番外編である。 大学時代からの仲間から、ある小冊子が見つかったと渡された。ずいぶん昔、私が大学を卒業し、新聞記者一年生のときに書いた「論文」が載った小冊子だった。 小冊子のタイトルは「朱光」、昭和48年2月発行…

跋 葦牙のごと萌え騰がれ

私たちが思考停止に陥れさせられた最大の原因は、自虐教育と一部マスコミの偏向したヒステリックなキャンペーンにある。 自虐教育によるいびつな拝外思想の誤りは、遺伝子考古学や分子人類学の発達で正され、古典史料を忠実に解釈することで、古代史の真実も…

巻の十 特異な日本人の脳

虫の音を美しいと感じる秋となったが、そう感じるのは日本人だけらしい。雨の降る音、特に春雨や時雨れに、日本人は特別の情緒を感じる。 しとしとぴっちゃん、と歌ったのは子連れ狼の主題歌だった。幼い大五郎の孤独、寂しさ、父の拝一刀への信頼、さまざま…

巻の九 後編 忘れがたい体験の数々

ヨ 再びの雪 食を絶ってから、最も飢餓感が高まるのは二日目から三日目。空腹で胃が痛いほどで、作業をしていても力が出ない。修行ではなく、どこかの無人島に置き去りにされている状況なら、木の根を掘ってでも口に入れようと思ったに違いない。 さらに、宿…

巻の九 前編 断食斎籠行私記

私が体験した断食行の具体的な内容を述べる前に、当時の世相を記しておこう。 一九七〇年直前、日米安保条約改定反対や大学臨時措置法反対で、全国の大学は全共闘系学生によるバリケード封鎖、共産党青年組織の民青系学生による無期限ストライキで、荒れに荒…

巻の八 後編 古神道の実際の修行法

イ しづめ 直霊を発現するためには、禊祓いに加え、鎮魂行が必要である。罪穢れを禊祓っても、肝心の直霊が体から遊離していては発現できない。遊離している魂を腹に鎮魂(しづめ)て、初めて神人一体となる。 鎮魂行の一つが神籬神事、あるいは「ふる行事」と…

 巻の八 前編 再興された昭和神祇院

中国戦線が泥沼化し、日独尹三国同盟の調印で緊迫化する世界情勢の中で、明治初めに廃止された神祇院が、昭和十五年十一月に再興された。政府は神祭りが重要だと認識を新たにしたのだろうが、「官僚神道」を主導してきた当時の政府は、神祇をどう扱っていい…

巻の七 後編 天皇の祭祀は民の幸せを祈る

ヨ すめらみこと 天皇は祭祀王だとはよく言われるが、ただ祭祀を執り行われるだけではない。祭祀の前には禊祓いをし、さまざまな行を執行して身を慎んでから神々に奉仕される。 祭祀の前に行われる天皇の厳しい行や禊祓いは、われわれ世俗の人間にはほとんど…

 巻の七 前編 あるべき国の姿を求めて

自虐史観の蔓延で思考停止に陥った我が国の指導者や国民は、近隣諸国の顔色を窺い、不要な謝罪を繰り返す情けない国をつくってしまった。毅然とした姿勢を取り戻さなければ、世界に媚を売るだけの、自尊心を失った軟弱国家が続き、いずれ滅びかねない。 国を…

巻の六 後編 息吹永世が現代人を救う

ヨ 神霊のざわめき こうした神懸りという神霊との接触は、先達の指導なく無闇に行うと、危険を伴うことは言うまでもない。命を落としたり、精神に異常を来たすこともある。 例にするのは恐れ多いが、神功皇后の神憑りでは、仲哀天皇が崩御されている。 神懸…

巻の六 秘められた奇跡の道は禊から

現代は第三次宗教ブームだと言われているが、自己を内省し精神を高みに導くべき宗教でも思考停止が起きている。いや、宗教だからこそと言うべきか。 鰯の頭も信心からというが、傍から観れば首を捻る教祖の言動でも、信者が頭から信じてしまうのが宗教だ。宗…

巻の5 後編  本つ教えの本質歪めた明治政府

ミ 復古神道の爆発 吉田神道や垂加神道の流れを汲み、仏教や儒学の影響を排除し、古事記や万葉集などの、我が国固有の古典に忠実に従おうとしたのが国学者たちだった。 その先兵となったのが、京都の伏見稲荷大社の神官の家に生まれた荷田春満(かだあづまま…

巻の五前編 国の危機に甦る地下清流「本つ教」

私たちの住む町や村には、少し目を周りに向けるとさまざまな神社があり、祭りが行われている。春は豊作を祈って田植えをし、秋には収穫を感謝し、国や地域の安全を祈り、子供が生まれればお宮参りで健康に育つよう祈り、初詣でや受験の合格祈願、交通安全や…

巻の四 後編 記紀以前の書はあったか?

イ 古語拾遺が古代文字を否定? 歴史の教科書には、古事記は「語り部の阿礼が誦んだものを、安萬侶が書き記した」と一般に書かれている。古事記を解説した諸々の書物も、ほとんど同じ意味合いで序文を解説しているが、ここで疑問に感じることはないだろうか…

巻の四 中編 古事記はビッグバンを示唆

ミ アマかマノかマガか こう書くとまるでナゾナゾだが、言霊にとって実に重大な事柄を含んでいる。 「天地初發之時、於高天原成神名、天之御中主神」 言霊の宝庫・古事記の本文冒頭には、こう書かれている。 「天地(あめつち)初めて發(ひら)けし時、高天原に…

巻の四 前編 言霊と古代和字の神秘

巻の四 言霊と古代和字の神秘 思考停止は日常の言葉をも汚染し呪縛している。自らの主張に魂が入っていなければならない政治家の多くが、上滑りて使い古した言葉ばかりだ。それを正さなければならない知識人といわれる人々にも、正確な言葉を遣えない人間が…

巻の三後編 小六なら解ける邪馬台国の位置

ミ 魏志倭人伝を正確に読む 卑弥呼といえば魏志倭人伝、魏志倭人伝といえば卑弥呼と、多くの人が反射的に言葉を思い浮かべるだろう。奈良県や九州北部で祭殿遺跡が発見されれば、卑弥呼の館ではないかと、大マスコミは大騒ぎする。過剰反応としか思えないが…

巻の三前編 実在した神武天皇と神功皇后

ヒ 神武東征は歴史的事実 日本書紀に記載されていることは、朝廷の権威を高めるための創作で虚構である。百歳を超える長命の天皇が何人もいるのは、朝廷の歴史を長くみせるためのでっち上げで、欠史八代の天皇は存在せず、神武天皇や神功皇后は架空の人物で…

巻の二 後編 60年が謎のカギ

ヨ 百歳を超える天皇が多い理由 神武天皇紀元が西暦紀元前(BC)六六〇年に設定されたのはなぜなのか。百歳を超える長命の天皇が十一人、治世が六十年を超える天皇が仁徳天皇以前に十人もいるのはなぜなのか。日本書紀にはさまざまな謎がある。 それを解明…

巻の二前編 記紀の不思議に迫る 

古事記や日本書紀を、後世の潤色が多く歴史的事件を伝えていないと批判したのは、戦前から戦後にかけて、歴史学会に一大旋風を巻き起こした津田左右吉(そうきち)だった。津田史学は文献批判、史料批判を基に記紀を分析、戦前は皇国史観に反するとして著作が…

巻の一 続き 

ミ 縄文文化の先駆性 我が国の古代を、縄文時代と弥生時代とに分ける二重構造論が一般的で、網目のついた(ないものもある)縄文土器が作られたのが縄文時代、稲作農耕文化に伴う弥生土器が作られたのが弥生時代といわれている。 縄文土器についても稲と同じ…

巻の一 歴史の″常識″は正しいのか?

同じ言葉を繰り返し耳にしていれば、それが間違いであっても正しいと信じ込んでしまうのが、悲しいことに人間の習性である。従軍慰安婦や南京大虐殺などはその典型である。嘘も百回言えば本当になる。 私たちは文部行政や教職員組合によって、日本人は戦争を…

国の本つ姿を求めて

序 君、国売りたもうなかれ 此(こ)の国は伊多佐夜藝有(いたくさやぎあり)て、蠅声(さばへな)す邪(あ)しき政治屋や新聞屋どもは、地震(ない)振(ふ)りて津浪(つなみ)起こり、数多(あまた)の國(くに)民(たみ)を一道(ひとみち)へ押し流した哀しみと、塗炭の苦し…