2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

永遠なる魂 第一章 命の水 3

3 浅井はある患者のことがずっと気掛かりで、研究所の運営が楽になっても心楽しまなかった。 その患者の父親と初めて会ったのは一年半ほど前だった。野村という六十歳近い老紳士で、浅井がある新聞に「ゲルマニウムにとりつかれて二十余年」と題して寄稿し…

永遠なる魂 第一章 命の水 2

2 翌日の月曜日。午前十時に東京都調布市の浅井ゲルマニウム研究所へ出勤した浅井に、待っていたように小柄で小太りの及川浩と、ほっそりした柿本紀博が走り寄ってきた。及川は山登りと蝶々の収集が趣味で、外歩きばかりしているので肌は焼けて浅黒く、普段…

永遠なる魂 波乱の人生を有機ゲルマニウムに懸けた男の物語

この作品は2002年10月にバンガード社から刊行した。だが、社長の木場康治氏が急逝、同社は解散となり、作品は絶版となった。 その後、アマゾンなどで古書が、4500円~1万6500円という、途方もないプレミアム付き金額で販売されてきた。 あまりにも行…