2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

永遠なる魂 第五章 余命二年 1

1 ある日、船田という大手企業に勤める四十二歳の男性が、知人の紹介状を持って浅井を訪ねてきた。暗い顔色の船田は目が真っ赤に充血し、聞き取りにくい小さな声で、ため息をつくように説明した。九歳になる長女が、大学付属病院で骨髄性白血病と診断され、…

永遠なる魂 第4章 奇跡の水 3

3 小松や丹野の協力で、絶望の淵から蘇り心機一転しての再出発にあたり、浅井は有機ゲルマニウムの製品名をアサイゲルマニウムと名付けた。自分の名前をつけたかったわけではないが、有機ゲルマニウムは浅井の人生そのもので、柿本たち所員にとっても浅井と…

永遠なる魂 第4章 奇跡の水 2

2 管の好意で研究所を得た所員の意気は上がり、水に溶ける有機ゲルマニウムの合成は成功していなかったが、石炭に関する研究は順調に進んだ。そのおかげで、浅井は昭和三十四年秋に発明および新技術開発で社会に貢献した功績を認められ、政府から紫綬褒章を…

永遠なる魂 第四章 奇跡の水 1

1 浅井が最も研究に力を注いだゲルマニウムは、発見の歴史から神秘に包まれている。一八六九年、ソ連の科学者メンデレーエフは六十二種類の元素を調べ、元素の周期律表を発表した。メンデレーエフは周期律表の三十二番目を空白にし、将来発見されるべき元素…